創立記念大会・シンポジウムにあたって
グローバル・ガバナンス学会会長 山本武彦
今年の3月に創立を決定し、準備を進めて参りました「グローバル・ガバナンス学会」の創立記念研究大会と記念シンポジウムが9月29日(土)に早稲田大学国際会議場井深大記念ホールで開催されることとなりました。ガバナンス概念は多様です。しかも、ガバナンス概念が用いられる公共空間は、市民社会的規模から地球全域を覆うほど広範囲に及び、また争点領域も実に多様です。本学会で今後議論される様々な論点は互いに関連し合い、立体的かつ複合的に絡み合った関係を浮き彫りにしていくことは間違いありません。設立記念研究大会・記念シンポジウムの大会テーマとして『グローバル・ガバナンス研究の創生』とした点は、このような立体的で複合的な関係性をもったグローバル・ガバナンス概念の枠組み構築や争点領域におけるガバナンスの実像に迫っていくための手掛かりを探り出すことに狙いを定めたからです。 午前中の創立記念研究大会では、若手研究者とベテラン研究者によるグローバル・ガバナンス概念の捉え方や社会学的発想からみたガバナンス概念の意義について3名の会員の方からご報告をいただき、その後にフロアーとの討論を通じて、グローバル・ガバナンスの学問的意義を抉り出したい、と考えます。 9月29日は、奇しくも40年前のこの日に北京で田中角栄首相と周恩来首相が日中国交回復宣言に署名した記念すべき日です。この記念すべき日にあたって、グローバル・パワーとしての力量を備えるに至った中国の過去と現在を繋ぐ要素に着目し、グローバル・ガバナンスの影響力あるアクターとしての中国の役割と相方としての日本の役割について白熱した議論をシンポジウムで展開したいと考えます。 この40年の間に中国は改革開放路線に踏み出し、冷戦終結後の経済発展は目覚しく、2010年には国内総生産(GDP)でアメリカに次ぐ世界第2位の地位を占めるまでに至りました。しかし、その一方で、日中関係には尖閣諸島の領有権問題や東シナ海におけるガス田開発問題といった主権規範に触れる問題、さらに歴史認識問題など、両国のナショナリズムを触発する諸問題が頻発し、不安定な関係の処理に悩まされ続けてきました。 中国の直面する問題は日中関係だけにとどまらず、対前年比10%を超える軍事費の増大を通じて、地域軍事大国としてのみならず、グローバルに軍事力を投射する能力を着実に強化しつつある国として、特にアメリカの警戒心を高めてきました。世界は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国やヨーロッパ連合(EU)諸国だけでなく、アフリカ、中南米にまで及ぶ軍事力や経済力に象徴される中国のハード・パワーの急速な投射行動に警戒を強め、責任あるステーク・ホルダーとしての役割に期待を寄せてきました。設立記念シンポジウムでは日中国交回復40周年の記念すべき日に当たって、日中両国はグローバル・ガバナンスの将来を見据えてどのような行動を取るべきか。特に、21世紀に入って以降、アメリカ・ロシアをも包括する東アジア共同体の構築にむけて日中両国はどのようなガバナンスの構想を共有し合い、同時にアメリカと共有すべきガバナンスの構想をどのように巡らせていけばよいのか、といった論点を中心に議論し合っていただきます。 以上の構成で創立記念大会を進行させていきますので、会員の皆様の活発なご参加とご意見を大会当日にお寄せ下さいますよう、お待ちしております。プログラム 共通テーマ:グローバル・ガバナンス研究の創生 10:00-12:30 設立記念大会「グローバル・ガバナンス論の意義を問う」 報告者 白川俊介(日本学術振興会特別研究員PD) 「グローバル・ガバナンスの制度構想に関する一考察―政治哲学的観点から」 西山志保(立教大学教授) 「社会を変える新たな主体―コミュニティ・ガバナンスと市民社会」 山本啓(東北大学名誉教授・法政大学客員教授) 「グローバル・ガバナンスとグローバル・アクターの変容」 討論者 大矢根聡(同志社大学教授) 司 会 菅英輝(九州大学名誉教授・西南女学院大学教授) 14:00-16:30 設立記念シンポジウム「日中国交回復40周年とグローバル・ガバナンス——東アジア共同体構築を見据えて」 基調報告 毛里和子(早稲田大学名誉教授・2011年度文化功労者) パネリスト 服部龍二(中央大学教授) 朱建栄(東洋学園大学教授) 三浦俊章(朝日新聞論説委員) 司会 山本武彦(早稲田大学教授) 16:30-17:00 総会 総会後 懇親会(大隈ガーデンハウス・カフェテリア・会費3000円) *記念大会のプログラムは、本学会のウェブページ(https://globalgovernance.jp/)でも順次更新してご案内いたします。 会場:早稲田大学 井深大記念ホール 早稲田大学へのアクセス 井深大記念ホールへのアクセス 主要交通案内 JR山手線・西武鉄道 高田馬場駅から徒歩20分 地下鉄東京メトロ 東西線 早稲田駅から徒歩8分 副都心線 西早稲田駅から徒歩17分 学バス 高田馬場駅 ― 早大正門 PDF版はこちら