グローバル・ガバナンス学会 第5回研究大会 開催ご案内

  情報・通信技術の革命的な発展を駆動因にして、グローバリゼーションの奔流は地球社会の隅々にまで行き渡ろうとしている。そのスピードは、時空を超えて人間生活のあらゆる側面に影響を及ぼし、それゆえに時には地球社会の格差化を促す要因ともなりかねない。地球社会の格差化が進行すればするほど、グローバル化に抗うナショナリズムやローカリズムの力学が増す傾向が強まりを見せるのは、グローバル化時代が生み出した一つの逆説といえようか。
 それでは、こうした時代背景の下で「国際公益」追求の論理は萎えつつあるのかという問いかけが当然投げかけられよう。今では古典的用法となってしまった感のあるハイ・ポリティックス領域とロウ・ポリティックス領域に敢えて分ければ、核・非核兵器の軍備管理・軍縮というハイ・ポリティックスの争点は、人類の生存に関わる根本問題であるにも関わらず解決への道は未だ遠い。南北の経済・社会格差に象徴されるロウ・ポリティックスの争点にしても、「人間の安全保障」を脅かしてやまないほど南北間格差の拡大に拍車がかかる。
 このような傾向は、グローバリゼーションの趨勢が強まるほどに、ますます勢いを増していこう。冷戦終結後の宗教紛争やテロリズムの氾濫は、ハイ、ロウ、いずれの政治をも共時的に包み込む破壊的効果を帯びながら、国際公共財の基礎を蝕んできた。この現象を「国際公益」の破壊的要素の氾濫と言い換えてもよい。
 「公益」という概念ほど、多様な解釈を生み出す概念はない。国際社会における「公益」とは何か、を問う場合でも同様である。ただ言えることのひとつは、「公益」概念は「公共財」の概念と重なり合い、国際社会においても「国際公共財」の概念に置き換えて「国際公益」概念を捉えることが可能であろう、ということである。しかし、国際システムの基本構造が国民国家体系として生きながらえる限り、「国際公益」をあらゆる政策領域で実現していくことほど困難な作業はない。好むと好まざるとにかかわらず、「主権」規範が国家の最後の砦として立ちはだかるからである。人類の共有すべき環境保全の規範が「主権」規範の前に翻弄されてきた気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の歴史は、この点を見事に例証している。
 第5回研究大会では、「公益」概念を改めて問い直し、グローバル・ガバナンスの有り様にどのように関わってくるかを論議する場とし、研究の深まりを模索する機会としたい。 今研究大会は日本公益学会との共催により実施することとなった。共催に快く応じていただいた日本公益学会に深く感謝するとともに、研究大会における共催の成果が共有されることを信じて疑わない。

グローバル・ガバナンス学会会長 山本武彦

▼ 日時:2014年10月4日(土)10時~

▼ 会場:専修大学(神田キャンパス)

▼ 大会プログラムPDF版 日本語プログラム English Program

▼ 大会プログラム概要

  • 基調講演:「公益資本主義の実現に向けて」(10:05~11:30)
     原丈人 国連経済社会理事会政府間機関特命全権大使
           アライアンス・フォーラム・財団代表理事
           内閣府本府参与・経済財政諮問会議専門調査会 会長代理
     討論者:荒木義修(武蔵野大学)、福田耕治(早稲田大学)
     司会:松田憲忠(青山学院大学)
  • 部会Ⅰ:国際機構が中小国を再建/誕生させる方法(13:40~15:20)
     司会:宮脇昇(立命館大学)
     ・ 玉井雅隆(立命館大学) 「マイノリティが主張する時-国家建設とOSCE の役割」
     ・ 小山雅徳(同志社大学) 「欧州国際システムとコソヴォの国家建設」
     討論者:杉浦功一(和洋女子大学)
  • 部会Ⅱ:Global Governance and Global Accountability(13:40~15:20)
     ・ Ikuyo Hasuo (Osaka University)
      ”The United Nations Security Council and Accountability”
     ・ Takehiko Uemura (Yokohama City University) “Global Accountability of 
      Global Finance: from regulation to global tax and governance”
     ・ Mariko Shoji (Keiai University) “Global Accountability and the UN Norm: 
      The UN Global Compact as the Global Norm”
     Moderator & Discussant: Hajime Okusako (Waseda University)
  • 部会Ⅲ:自由論題(13:40~15:20) *日本公益学会との共催
     司会:菅英輝(京都外国語大学)
     ・ 山内利夫(プライスウォーターハウスクーパース株式会社)
      「欧州エネルギー市場におけるガバナンスと紛争予防
      -1990 年代以降の英国とポーランドを題材に-」
     ・ 今村由衣子(早稲田大学) 「政策実施研究:待機児童解消政策の事例について」
     討論者:富川尚(敬和学園大学)、渡部茂己(常磐大学)
  • シンポジウム:グローバル・ガバナンスと公益(16:00~17:45)
    * 日本公益学会との共催
     司会:山本武彦(早稲田大学)
     ・ 功刀達朗(国連大学サステイナビリティ高等研究所)
      「ガバナンスのパートナーシップに果たす行動規範の効用」
     ・ 福田耕治(早稲田大学) 「成長・雇用・社会保障のグローバル・ガバナンス
      ―格差問題から連帯と社会的包摂へ」
     ・ 大森 佐和(国際基督教大学) 「国際金融レジームのガバナンスとIMF」
     討論者:首藤もと子(筑波大学)

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