グローバル・ガバナンス学会 第4回研究大会 開催ご案内

 冷戦終結後、時をおかずして旧ユーゴスラ ビアでボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争が勃発し、イスラム教徒と セルビア正教徒とクロアチア人カトリック教徒との間で三すくみのエスニック紛争が勃発してからというもの、冷戦時代には封印されていた宗教紛争が随所で噴出し、宗教紛争をいかに予防し、争終結後の「紛争後管理(post-conflict management)」に如何にして誤りなきを期していくかに国際社会の関心が向けられてきた。そして2001年の9・11同時多発テロの勃発は、冷戦終結後の新世界秩序がもはや国家間政治の旧来の枠組みでは捉えきれない局面に入ったことを強く印象付けた。21世紀の国際秩序が宗教原理主義集団などの非国家主体の影響力の増大に向き合わざるをえなくったという意味で、我々はいまや冷戦後時代(post-Post Cold War era)の局面に佇んでいるといっても過言ではない。
 第4回研究大会の共通論題として宗教問題がグローバル・ガバナンスの行方に及ぼす影響を視野に入れて設定したのは、21世紀に入ってもなお国際関係の現在と将来に影を投げかけてきた宗教対立が醸し出す国内ガバナンスや地域ガバナンスやグローバル・ガバナンスにおける危機をどのよう捉え、安定したガバナンス・システムを構築するにはどのような道筋や方法が考えられるかを模索することを意図したからである。もちろん、一口に宗教対立といっても、民族構成との関連で国境を超えた宗教対立もあれば国民国家内部での多民族構成を原因とする対立もあり、その幅は実に広くかつ複雑である。
 そこで今大会は、グローバル・ガバナンスのあり様に歴史的に多くの教訓を残し、しかも現在な お負の影響を与え続けているユダヤ教 とイスラム教の対立に焦点を合わせつつ、しかもイスラム教の宗派間対立の相貌にも焦点を合わせ、モザイク模様に覆われた世界の宗教対立がグローバル・ガバナンスの行方に与える影響について真摯な討論を展開したいと思う。もちろん世界の宗教対立は、シオニズムとイスラムとの対立だけにとどまらず、キリスト教やヒンズー教や仏教世界をも巻き込む様相を強めてきた。その点で、より包括的な宗教対立の相貌を浮き上がらせ、グローバル・ガバナンスの難題ともいうべき宗教対立の全体像に迫る必要性を強く認識せざるをえない。この点については、今後の本学会における継続的研究テーマとして強く意識していかねばならないと思う。
 第4回研究大会の開催に当たっては関西政治社会学会の多大なご支援を得て、同学会との共催という形をとらせていただいた。この研究大会で午後の「アジア太平洋地域における人間の安全保障と環境のガバナンス」のセッションを関西政治社会学会に設定していただいた。実に現代的テーマであり、本学会の研究射程にも含まれる重要なテーマである。本学会の一つの目標でもある関係諸学会とのコラボレーションの趣旨にも、合致することはむろんいうまでない。今後の相互協力の進化と深化を視野に入 れながら、充実した討論が展開されるものと期待したい。 

グローバル・ガナンス学会長 山本武彦

▼ 日時:2014年4月12日(土)10時~

▼ 会場:同志社大学・烏丸キャンパス 志高館

▼ 大会プログラムPDF版 日本語プログラム English Program

▼ 大会プログラム概要

  • 部会Ⅰ:自由論題(10:00~12:00)
     ・ 笹岡雄一(明治大学) 「アセアン規範の日中への浸透」
     ・ 小宮山功一朗(慶應義塾大学)
      「サイバー空間における信頼醸成措置の実現にむけて」
     司会兼討論者 宮脇昇(立命館大学)
  • 部会Ⅱ:複合的グローバル・ガバナンス(10:00~12:00)
     司会:杉田米行(大阪大学)
     ・ 上村雄彦(横浜市立大学) 「グローバル・タックス と地球環境ガヴァナンス
      ―気候資金ガヴァナンスを手掛かり に 」
     ・ 西谷真規子(神戸大学) 「複合的グローバル・ガバナンス
      ―グローバル腐敗防止ガバナンスを一例として」
     討論者:蓮生郁代(大阪大学)、横田匡紀 (東京理科大学)
  • 部会Ⅲ:グローバル・ガバナンスとしての冷戦とその変容(13:50~15:50)
     司会:菅英輝(京都外国語大学)
     ・ 秋田茂(大阪大学) 「冷戦・開発主義とシンガポールの工業化 」
     ・ 鄭敬娥(大分大学) 「冷戦期におけるアジアの開発問題と日本
      ―グローバル・ガバナンスの観点から 」
     ・ 芝崎祐典(筑波大学) 「反核運動と冷戦—1950, 60年代イギリスを中心として」
     討論者:小野沢透(京都大学)
  • 部会Ⅳ:グローバル・ガバナンスと宇宙(13:50~15:50)
     司会兼討論者:青木節子(慶応義塾大学) 
     ・ 福島康仁(防衛省研究所) 「宇宙利用をめぐ る安全保障とグローバルガナンス」
     ・ 奥村由季子(国際法研究者)  「国連宇宙空間平和利用委員会における
      長期的持続可能性ワーキング・グループの動向」
  • 部会Ⅴ:アジア太平洋地域における人間の安全保障と環境のガバナンス(13:50~15:50)
    * 関西政治社会学会との共催

     司会:新川達郎(同志社大学)
     ・ 濱崎宏則(長崎大学)  「気候変動による水資源環境への影響と適応策の検討
      -メコン河流域を中心として」
     ・ 王智弘(総合地球環境学研究所)  「アジア環太平洋地域の人間環境安全保障:
      水・エネルギー・食糧連関」
     討論者:佐藤洋一郎(京都産業大学)、アイスン・ウヤル(同志社大学)
  • 共通論題:グローバル・ガバナンスと宗教(16:00~18:15)
     司会:山本武彦(早稲田大学)
     ・ 奥田敦(慶応義塾大学)  「イスラームとグローバルガバナンス」
     ・ 池田有日子(専修大学)  「アメリカ・シオニスト運動におけるパレスチナ秩序構想」
     ・ 宮田律(現代イスラム研究センター)  「イスラム的ガバナンスと紛争」
     討論者:石合力(朝日新聞)
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