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グローバル・ガバナンス学会 第2回研究大会 確定版プログラム
グローバル・ガバナンス学会第2回研究大会の確定版プログラムをお知らせします。地図・交通案内についてはPDFファイルをご覧ください。
プログラム(PDF版)
Program in English (PDF)
日時:2013年4月6日(土)10時〜
会場:立命館大学 洋洋館
グローバル・ガバナンスと規範
グローバル・ガバナンス学会会長 山本武彦
2012年9月29日に開催されましたグローバル・ガバナンス学会の創立記念シンポジウムは、日中国交回復40周年という記念すべき日と奇しくも同じ日に実施され、ちょうど尖閣諸島国有化(9月11日)が決定された直後ということもあり、大きな関心を呼び起こしました。現代国際システムの基本構造である主権国家体系が、いまなお牢固として生き続けていることを肌身を通して感じられたことと思います。尖閣諸島近辺で起こった射撃管制レーダー照射事件も、まだまだ危機の余波が鎮まっていないことを感じさせずにはおきません。
他方で、北朝鮮は衛星打ち上げ用ロケットと称して昨年12月12日に長距離弾道ミサイルを発射し、2か月後の今年の2月12日には第3回目の核実験が実施されるなど、北東アジアは古典的なナショナル・ガバナンスの衝突しあう場にとどまり続けている地域であることを、いやというほど実感させました。国連安保理事会は追加制裁を発動し、また核実験後のさらなる制裁の発動を模索しています。
また2012年から13年の冬は、北京が空前の大気汚染に襲われ、PM2.5という聞き慣れない物質の襲来に見舞われました。中国の急速な経済発展は環境劣化をもたらし、健康を限りなく蝕む「人間の安全保障」の危機を加速させて止みません。3・11東日本大震災と福島第一原発事故後の放射能汚染と重なりあう形で、「人間の安全保障」が二重の危機にさらされていることを強く意識せざるを得ません。
私たちの住む東アジアだけを取ってみましても、「主権」の“規範”と「固い安全保障(hard security)」や「柔らかい安全保障(soft security)」の“規範”が折り重なるようにせめぎ合っていることに気づきます。さらに市民社会アクターの成熟が日増しに高まり、時には「主権」“規範”と激しく衝突する場面を目にするようになりました。軍縮・軍備管理といった本来なら「固い安全保障」規範のせめぎ合う世界でも、近年、市民社会アクターが主権国家の固い殻を突き崩す動きが顕著になっています。対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約の成立にNGOが主導的役割を果たしたことは、記憶に新しいところです。
私が国連に出向していた2011年に、武器貿易条約(Arms Trade Treaty: ATT)の締結を加盟各国に働きかけるオックスファムの各国団体の連携行動を見て、いまや市民社会アクターが最も「固い安全保障」分野にまで切り込む時代に入ったことを痛切に感じました。ある意味で、それは「主権」”規範“の揺らぎを示しているのかもしれません。国際社会に「市民社会」規範が国際関係論で広く市民権を得つつある動きの一つ、と捉えることもできましょう。国際関係におけるシビル・ガバナンスの一態様として描き出すことができるかもしれません。
第2回研究大会では共通論題として「グローバル・ガバナンスと規範」を設定しましたが、多様化するガバナンス概念にどのような規範性が含まれるのか。同時に、関係性の深い隣接する争点分野間の相互ガバナンス概念にはどのような規範性が内包されるのか。問われなければならない新しい疑問が次々と湧きおこっている現在、専門知を駆使しつつも、隣接分野の専門知との擦り合わせがいかに大切かを認識する機会となることを願ってやみません。